ピロリ菌が感染して胃粘膜に炎症をおこし、萎縮性胃炎が進行すると胃がんの発生が高まると言われています。
しかし、ピロリ菌を除菌することで、胃がんの発生を抑制できることが明らかにされています。
胃がんになるリスクを減らす方法は、
- ピロリ菌陽性であれば、除菌。
- 除菌しても残念ながら胃がんの発生はゼロにはならないので、除菌が成功しても定期的な胃カメラ検査を受ける
ことです。
早期に胃がんが見つかれば、内視鏡治療で完治し、胃袋は残ります。
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ピロリ菌が感染して胃粘膜に炎症をおこし、萎縮性胃炎が進行すると胃がんの発生が高まると言われています。
しかし、ピロリ菌を除菌することで、胃がんの発生を抑制できることが明らかにされています。
胃がんになるリスクを減らす方法は、
ことです。
早期に胃がんが見つかれば、内視鏡治療で完治し、胃袋は残ります。
ピロリ菌は、胃の粘膜に生息しているらせんの形をした細菌です。
ヘリコバクターの「ヘリコ」はらせん形から命名されています。一方の端に鞭毛と呼ばれる毛が4~8本付いていて活発に運動することができます。
胃には強い酸(胃酸)があるため、通常菌は生きていけません。しかし、ピロリ菌は、「ウレアーゼ」という酵素を持っているためピロリ菌の周辺をアルカリ性の環境にできるので、酸を中和することによって生き延びることができるのです。
ピロリ菌に感染すると胃に炎症を起こします。胃・十二指腸潰瘍の患者さんの約90%は、ピロリ菌が原因で胃・十二指腸潰瘍になっています。
ピロリ菌を除菌すると胃・十二指腸潰瘍の再発率は著しく下がります。また、胃がんの発生にかかわっていると言われています。
感染経路に関しては、まだはっきりわかっていませんが、口を介した感染(経口感染)が大部分であろうと考えられています。
ピロリ菌の感染率は、幼児期の衛生環境と関係していると考えられており、上下水道が十分普及していなかった世代の人で高い感染率となっています。
日本では、60歳以上の70~80%が感染していると言われていますが、衛生環境の改善に伴い若年層の感染率は減少傾向にあり、10~20代の感染率は10%前後と言われています。
また、ピロリ菌に感染する時期は、免疫機構が十分に発達していない5歳以下の乳幼児がほとんどで、成人になってからは、わずかだと言われています。
免疫力の低い幼児期に生水(主に井戸水)や食べ物と一緒に摂取してしまうことが大半です。さらに幼児の場合、胃酸酸度や分泌量が低く、ピロリ菌が胃内で生き続けやすい環境であることも感染要因の一つです。
免疫機能が十分に発達しておらず、胃酸分泌の少ない乳幼児の場合は、親族から口を介して感染する場合があります。
ピロリ菌に感染している大人から小さい子供への食べ物の口移しなどは感染させる危険があるので止めましょう。
ピロリ菌感染そのものによる症状というものは、ほとんどありません。ピロリ菌に感染するとほとんどの人は慢性的な胃炎が起こりますが、胃炎そのものは症状を起こしません。しかし、ピロリ菌感染によって、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどを発症することによって、腹痛・腹部膨満・食欲不振・体重減少などの症状が現れます。
いわゆる「胃の調子が悪い」といっても必ず病気があるわけではなく、逆に「症状が出ない」といっても病気が密かに進行している場合もあり得るのです。
Asaka M: int JCancer.2013.132(6)より引用改変
検査の種類のご説明の前に、ピロリ菌の検査が保険適用になるかどうかをご説明させていただきます。
ピロリ菌のみの検査を行いたいという方も多くいらっしゃいますが、ピロリ菌のみの検査では保険適用となりません。
現行の保険診療のル-ルでは、初回は胃カメラ検査を行い胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍の所見のある方しかピロリ検査を行うことはできません。
また、検査の回数や期間についてもガイドラインに基づいた制約があります。
ピロリ菌の検査は、胃カメラを使う方法と胃カメラを使わない方法があります。
胃カメラにより摂取した胃の組織を用います。
ピロリ菌のもつ酵素のはたらきで作り出されるアンモニアを調べてピロリ菌がいるかどうかを調べます。
採取した胃の組織を染色して顕微鏡でピロリ菌がいるかどうかを調べます。
採取した組織を用いて培養し、ピロリ菌が増えるかどうかを調べます。
人は菌に感染すると、体内に「抗体」を作り出します。ピロリ菌に感染した時にも「抗体」が作られますので、血液や尿を採取してこの抗体の有無を調べることで感染を測定します。
容器に息を吹き込んで呼気を調べる方法です。特殊な尿素製剤である試験薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断します。
ピロリ菌の持つウレアーゼにより、尿素が二酸化炭素とアンモニアに分解されますが、その時に発生した炭酸ガスが呼気中にどの程度含まれているかにより判定する方法です。
この検査は、患者さまへの身体の負担がほとんどなく、簡単査で、かつ感度も高い検査方法です。
糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。この検査も身体への負担はございませんので、小児での検査も可能です。
ピロリ菌の治療では、3種類の薬を服用し、一週間飲むと70~80%の人が除菌できます。
治療は上記疾患の患者さまを対象に、以下の流れで行います。
1種類の「胃酸を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の合計3錠を同時に1日2回、7日間服用します。
「抗菌薬」は抗生物質ですが喉の感染や呼吸器感染でもよくつかわれる抗生物質でそれほど強い副作用はありません。
一次除菌療法と同じ1種類の「胃酸を抑える薬」と1種類の「抗菌薬」、一次除菌療法とは別の1種類の「抗菌薬」の合計3剤を同時に1日2回、7日間服用します。
ピロリ菌に耐性ができていて一次除菌療法でも除菌できない場合、二次除菌療法で他の抗生物質を使用して除菌を行うことができます。
除菌ができたかを確かめるときは尿素呼気試験・便中抗原検査で調べます。