胃潰瘍は、胃の内壁にできる深い傷や潰瘍のことを指します。通常、胃の内壁は胃酸や消化酵素から保護されていますが、何らかの原因でこの保護が弱まると、胃酸や消化酵素が内壁を直接攻撃し、潰瘍が形成されます。胃潰瘍は胃の痛みや不快感を引き起こすことが多く、放置すると悪化して出血や穿孔（胃壁に穴が開くこと）を引き起こす恐れがあります。

胃潰瘍は、特に食後や空腹時に強い痛みを伴うことがあり、早期の診断と治療が必要です。症状が進行する前に適切な治療を受けることが、合併症を防ぐために非常に重要です。

胃潰瘍は多くの要因によって引き起こされます。主な原因としては以下のものが挙げられます。

1. ピロリ菌感染

ピロリ菌（ヘリコバクター・ピロリ）は、胃の内壁に感染する細菌で、胃潰瘍を引き起こす主要な原因の一つです。ピロリ菌は胃酸の強い環境でも生き残ることができ、胃の粘膜に炎症を引き起こします。この炎症が続くと、胃潰瘍が発症することがあります。

2. 非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）の使用

NSAIDs（アスピリンやイブプロフェンなど）は、痛みや炎症を抑えるために広く使用されていますが、長期間にわたって使用すると、胃の内壁を傷つけ、胃潰瘍を引き起こすことがあります。これらの薬剤は、胃の粘膜を保護するプロスタグランジンの生成を抑制するため、胃潰瘍が発生しやすくなります。

3. 過度のアルコール摂取

過度のアルコール摂取は胃粘膜を刺激し、炎症を引き起こす原因となります。アルコールが胃壁を傷つけることで、胃潰瘍が進行することがあります。

4. ストレス

過度の精神的ストレスや身体的ストレスも胃潰瘍の原因となることがあります。ストレスが過剰にかかると、胃酸の分泌が増加し、胃粘膜が傷つくことがあるためです。

5. 喫煙

喫煙は胃酸の分泌を増加させるだけでなく、胃の粘膜を保護する役割を果たす物質を減少させるため、胃潰瘍のリスクを高めます。また、喫煙は治癒を遅らせる要因にもなるため、胃潰瘍を治療する際には禁煙が推奨されます。

胃潰瘍の主な症状は以下の通りです。症状が現れるタイミングやその程度は個人差があります。

1. 胃の痛み

胃潰瘍の最も一般的な症状は胃の痛みです。痛みは通常、食後や空腹時に感じることが多く、鈍痛や焼けるような痛みとして感じられます。空腹時に痛みが強くなる場合もあり、食事をすると痛みが和らぐこともあります。

2. 胸やけ

胃酸が逆流することで胸やけを感じることがあります。胸やけは胃酸が食道に逆流することで発生し、焼けるような不快感を伴います。

3. 膨満感

胃潰瘍が進行すると、食後に膨満感を感じることが多くなります。胃の内壁が傷ついているため、食物を消化する過程で不快感を感じることがあります。

4. 吐き気や嘔吐

潰瘍が進行すると、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。これらの症状が現れた場合、潰瘍が悪化している可能性があるため、早急に受診することが推奨されます。

5. 出血

胃潰瘍が進行し、潰瘍が深くなると出血を引き起こすことがあります。出血すると、便が黒くなったり、吐血が見られることがあります。これは非常に危険な兆候であり、即時の治療が必要です。

胃潰瘍の診断は、症状や医師の問診をもとに行われますが、確定診断を行うためには以下の検査が必要です。

内視鏡検査（胃カメラ）

内視鏡検査は、胃潰瘍の診断に最も有効な方法です。内視鏡を使って胃の内部を直接観察し、潰瘍の大きさや位置を確認することができます。潰瘍の組織を採取して、悪性でないことを確認することも可能です。

ピロリ菌検査

ピロリ菌が胃潰瘍の原因となっている場合、検査でその有無を確認することができます。ピロリ菌検査には血液検査、尿素呼気試験、便検査などがあります。

X線検査

バリウムを使用したX線検査も、胃潰瘍を発見するための方法の一つです。内視鏡検査よりは確実性が低いため、補助的な検査として使用されます。