直腸潰瘍は、直腸の内壁に発生する潰瘍（ただれ）で、様々な原因によって引き起こされることがあります。潰瘍は通常、腸内の組織が傷つき、炎症を引き起こすことで発生します。直腸潰瘍は慢性的な疾患であることが多く、症状が進行する前に早期に診断され、適切な治療が行われることが重要です。

直腸潰瘍は、軽度の症状から重篤な症状までさまざまです。症状は個人差があり、発症の早期には自覚症状が少ない場合もありますが、進行すると以下のような症状が現れることが一般的です。

• 血便
  直腸潰瘍の最も一般的な症状の一つは血便です。便に血が混じることで発見されることが多いです。血の色が鮮やかであれば直腸近くの出血が示唆されます。
• 腹痛
  腫瘍や炎症による圧迫で、腹痛が生じることがあります。痛みは、食後や便通後に悪化することがあります。
• 下痢や便秘
  直腸潰瘍は腸の正常な機能を妨げることがあるため、便通に異常をきたし、下痢や便秘を引き起こすことがあります。
• 排便時の痛み
  直腸に潰瘍がある場合、排便時に痛みを感じることがあります。特に、腫瘍のサイズが大きくなると、この症状が強くなることがあります。
• 体重減少
  炎症が長期化すると、体重減少や食欲不振を引き起こすことがあります。これらの症状は、消化器系の機能が低下したために発生します。
• 発熱
  急性の炎症が発生すると、発熱が見られることがあります。これは体が感染や炎症に反応している証拠です。

直腸潰瘍の原因はさまざまですが、一般的に以下の要因が関与していると考えられています。

1. 炎症性腸疾患（IBD）

直腸潰瘍は、クローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患の一環として発生することがあります。これらの疾患は腸内の炎症を引き起こし、最終的に潰瘍に至ることがあります。

• 潰瘍性大腸炎
  潰瘍性大腸炎は、直腸から始まり、大腸全体に広がる炎症性疾患です。炎症が続くことで直腸内に潰瘍が形成されることがあります。
• クローン病
  クローン病も直腸潰瘍を引き起こす原因となる疾患で、腸のどの部位にも潰瘍を形成する可能性があります。

2. 感染症

細菌やウイルス、寄生虫などが直腸に感染することで潰瘍を引き起こすことがあります。これには、腸内細菌のバランスが崩れることや、感染が腸の粘膜に損傷を与えることが関連しています。

• 大腸菌やサルモネラ感染
  大腸菌やサルモネラなどの細菌感染は、腸内で炎症を引き起こし、最終的に潰瘍が形成されることがあります。
• ウイルス性腸炎
  ノロウイルスやロタウイルスなど、ウイルス感染によっても直腸潰瘍が引き起こされることがあります。

3. ストレス

精神的・肉体的なストレスが腸の機能に悪影響を与え、腸内での炎症や潰瘍の発生を助長することがあります。ストレスが直接的に潰瘍を引き起こすわけではありませんが、免疫力を低下させることによって関与する場合があります。

4. 薬剤の副作用

長期的な薬剤の使用が直腸潰瘍を引き起こすこともあります。特に、非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）や抗生物質などが腸内に影響を与える場合があります。

直腸潰瘍の診断は、症状と検査結果に基づいて行われます。以下は、代表的な診断方法です。

直腸診

直腸診は、肛門から指を使って直腸内を触診し、腫瘍や潰瘍が存在するかどうかを確認します。指を使うことで、潰瘍の大きさや位置を確認できることがあります。

内視鏡検査

内視鏡（大腸カメラ）を使用して直腸内を直接観察することで、潰瘍の有無や大きさ、位置を確認できます。内視鏡検査は、腫瘍や潰瘍の詳細を視覚的に確認できる最も重要な検査です。

生検

内視鏡検査の際に、腸壁から組織を採取して、潰瘍が良性か悪性かを確認するための生検を行います。これにより、炎症性疾患や感染症、腫瘍などの診断が確定します。

CT・MRI検査

直腸周囲の病変をより詳細に調べるために、CTやMRI検査を行うことがあります。これらの検査で腸の構造や周囲の組織の状態を確認します。