食道裂孔ヘルニアとは、胃の一部が食道を通る食道裂孔を越えて胸腔内に突出してしまう状態です。食道裂孔は、食道と胃をつなぐ部分であり、通常は食道が胸腔内に出ていないように設計されていますが、何らかの原因で食道裂孔が広がると、胃の一部が胸腔に入り込みます。これが「食道裂孔ヘルニア」と呼ばれます。放置すると、逆流性食道炎などの合併症を引き起こすことがあるため、適切な治療が重要です。

食道裂孔ヘルニアの症状は、胃の内容物が食道に逆流することに関連しており、個人差があります。症状が軽度の場合もありますが、重度の場合には日常生活に支障をきたすことがあります。

1. 胸焼け（焼けるような痛み）

食道裂孔ヘルニアの最も一般的な症状は胸焼けです。特に食後や横になると、胃酸が食道に逆流し、焼けるような痛みを感じることがあります。この症状は、逆流性食道炎を引き起こす原因となることもあります。

2. 吐き気や胃の不快感

胃の内容物が食道に逆流することにより、吐き気や胃の不快感が生じることがあります。特に食後に感じることが多く、食べ物が食道に残っているような感覚を伴うこともあります。

3. 嚥下困難（飲み込みにくさ）

食道裂孔ヘルニアが進行すると、食道の通過が困難になり、嚥下困難（飲み込みにくさ）を感じることがあります。食物や液体がスムーズに飲み込めない場合、ヘルニアが進行している可能性があります。

4. 喉の違和感

胃酸が食道に逆流することによって、喉の違和感や咳が生じることがあります。これにより、喉がイガイガしたり、時に咳が続くこともあります。

5. 胸部の圧迫感

食道裂孔ヘルニアが大きくなると、胸部に圧迫感を感じることがあります。これは、ヘルニアが胸腔内に入り込むことによって、他の臓器に圧力をかけるためです。

食道裂孔ヘルニアの原因には、解剖学的な問題、加齢、生活習慣などが関与しています。

1. 食道裂孔の拡大

食道裂孔ヘルニアは、食道裂孔が広がることで胃の一部が胸腔内に脱出する病気です。食道裂孔の拡大は、加齢や腹圧の上昇によって引き起こされることが多いです。特に、肥満や過剰な腹圧が食道裂孔の拡大を促進します。

2. 肥満

肥満は食道裂孔ヘルニアのリスクを高める重要な要因です。過剰な体重が腹部に圧力をかけ、胃が食道裂孔を越えて胸腔に突出しやすくなります。

3. 妊娠

妊娠中は、腹部の圧力が増加するため、食道裂孔ヘルニアのリスクが高まることがあります。特に、妊娠後期には子宮の膨らみが腹部を圧迫し、胃が食道裂孔に押し込まれることがあります。

4. 喫煙

喫煙は、食道括約筋（LES）の機能を弱めることがあります。これにより、食道と胃の間のバリアが不十分になり、胃酸が食道に逆流しやすくなるため、食道裂孔ヘルニアの発症を助長することがあります。

5. 遺伝的要因

食道裂孔ヘルニアの発症には、遺伝的な要因も関与することがあります。家族に食道裂孔ヘルニアを持つ人がいる場合、発症するリスクが高まることがあります。

食道裂孔ヘルニアの診断には、症状を基にした問診や、いくつかの検査が行われます。

内視鏡検査（胃カメラ）

内視鏡検査は、食道や胃の状態を直接観察できる最も信頼性の高い検査です。食道に炎症や潰瘍がないか、ヘルニアがあるかどうかを確認するために行います。

X線検査

バリウムを飲んで行うX線検査は、食道や胃の形状を確認するのに役立ちます。食道裂孔ヘルニアがある場合、バリウムが食道の裂孔部分を通過して胸腔内に広がる様子が確認できます。

 pHモニタリング検査

食道内の**酸性度（pH）**を測定する検査で、胃酸が食道に逆流しているかどうかを確認します。食道裂孔ヘルニアがあると、逆流が頻繁に起こる可能性があります。

胸部CT検査

胸部CTスキャンは、食道裂孔ヘルニアの進行具合を確認するために行われることがあります。特に、ヘルニアが大きくなっている場合や他の臓器に影響を与えている場合に役立ちます。