萎縮性胃炎
萎縮性胃炎
萎縮性胃炎(いしゅくせい いえん)は、胃の内壁にある胃粘膜が徐々に薄くなり、機能が低下する病気です。この状態が進行すると、胃の働きが低下し、消化不良や胃の不快感などの症状を引き起こすことがあります。萎縮性胃炎は、胃の粘膜が炎症を起こすことが原因で発症し、特に慢性化した場合に見られます。
萎縮性胃炎は、ヘリコバクター・ピロリという細菌の感染が主な原因であるとされていますが、他にも遺伝的要因や生活習慣(食生活や飲酒、喫煙)なども影響することが分かっています。慢性的な胃の不調を感じている場合、早期に検査を受け、適切な治療を行うことが大切です。
萎縮性胃炎は、初期段階では症状がほとんど現れませんが、病状が進行するにつれて様々な症状が現れます。主な症状は以下の通りです。
胃の不快感や重だるさ 食後に胃が重く感じる、または膨満感を感じることがあります。この症状は、胃の粘膜が薄くなることで、食物の消化がうまくいかなくなるためです。
胃痛 胃の上部に鈍い痛みを感じることがあります。痛みの程度は軽いことが多いですが、食後に強く感じることがあります。
食欲不振 萎縮性胃炎が進行すると、胃の消化機能が低下するため、食欲が減少することがあります。特に食事後に満腹感を感じやすくなります。
胸やけや酸っぱい感じ 胃酸が逆流して食道に到達することで、胸やけや酸っぱい感じを引き起こすことがあります。
吐き気や嘔吐 食後に吐き気を感じたり、時には嘔吐をすることもあります。胃の働きが低下することが原因です。
血便や黒い便 症状が進行すると、胃の粘膜が傷ついて出血し、血便や黒い便が現れることがあります。これは消化管からの出血を示している可能性があるため、注意が必要です。
これらの症状は他の胃の病気とも似ているため、自己判断せず、早期に医師の診断を受けることが重要です。
萎縮性胃炎は、いくつかの要因によって引き起こされるとされています。主な原因は以下の通りです。
ヘリコバクター・ピロリは、胃の中で生息する細菌で、胃炎や潰瘍、がんのリスクを高める原因とされています。慢性的なピロリ菌感染が萎縮性胃炎を引き起こし、胃粘膜の萎縮を進行させることがあります。
自己免疫性萎縮性胃炎は、免疫システムが自分の胃の細胞を攻撃することによって発症します。このタイプの胃炎は、特に胃の壁細胞や内因子(ビタミンB12の吸収に必要な物質)をターゲットにします。この結果、胃の粘膜が萎縮し、消化不良や吸収障害が引き起こされます。
長期間の過度なアルコール摂取や喫煙は、胃の粘膜にダメージを与えることがあり、慢性の胃炎や萎縮性胃炎を引き起こす原因となります。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗生物質など、長期間使用する薬剤が胃の粘膜に負担をかけ、萎縮性胃炎を引き起こすことがあります。
家族歴に胃炎や胃がんがある場合、萎縮性胃炎の発症リスクが高まることがあります。遺伝的な素因が関与するため、定期的な検査が推奨されます。
不規則な食事や食べ過ぎ、過剰な塩分摂取、ストレスが多い生活環境は、胃粘膜に悪影響を与え、萎縮性胃炎の発症を促すことがあります。
萎縮性胃炎の診断は、医師による問診や検査を通じて行われます。主な診断方法は以下の通りです。
胃カメラ(内視鏡)は、胃の内部を直接観察するための検査です。粘膜の状態を詳しく確認し、萎縮がどの程度進行しているかを評価します。さらに、必要に応じて生検を行い、胃粘膜の状態を確認します。
ヘリコバクター・ピロリ感染が疑われる場合、血液検査、呼気テスト、便検査などでピロリ菌の有無を調べることができます。ピロリ菌の除菌治療が効果的であるため、感染の有無を確認することが重要です。
血液検査では、胃の粘膜に関連する栄養素(ビタミンB12や鉄分など)の不足を調べることができます。特に自己免疫性萎縮性胃炎が疑われる場合は、血液中の内因子や抗体を調べることが役立ちます。
胃の壁やその他の腹部臓器に異常がないかを調べるために、腹部エコー(超音波検査)が行われることがあります。