ピロリ菌感染
ピロリ菌感染
ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori) は、胃の粘膜に生息する細菌で、世界中で非常に多くの人々が感染していることが知られています。ピロリ菌は胃の酸性環境に適応し、胃の粘膜に住み着くことができるため、消化不良や胃炎、胃潰瘍などの消化器系疾患を引き起こす原因となります。特に、ピロリ菌感染が長期間続くと、胃の炎症が進行し、最終的には胃がんのリスクを高めることが分かっています。
ピロリ菌感染は、食べ物や水を通じて感染することが一般的ですが、感染後は症状が現れにくいことが多く、知らずに感染していることが少なくありません。早期に発見し、適切な治療を行うことが、胃の健康を守るために非常に重要です。
ピロリ菌は主に以下の方法で感染します。
ピロリ菌は、感染者の唾液や食べ物を通じて他の人に感染します。家庭内や密接な接触をすることで、家族間で感染が広がることがあります。特に、衛生状態が悪い地域では、感染のリスクが高まります。
汚染された水や不衛生な食べ物を摂取することでも感染します。特に、衛生管理が不十分な飲食店や屋台での食事が原因となることがあります。発展途上国では、これらの要因が感染の主な原因となっています。
ピロリ菌は感染者の唾液にも含まれているため、共用の食器やカトラリーを使うことが感染経路になることがあります。
感染後、ピロリ菌は胃の中で増殖し、胃酸から保護されるため、症状が現れる前に数年または数十年かかることがあります。そのため、ピロリ菌に感染していることに気づかないことが多いのです。
ピロリ菌感染は多くの人々で無症状のまま進行しますが、症状が現れた場合、以下のような消化器系の不調が見られます。
ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると、炎症を引き起こし、食後に胃が重く感じたり、痛みを伴うことがあります。特に、空腹時や食事後に感じやすくなります。
消化不良やガスが溜まりやすくなり、胃もたれや膨満感が続くことがあります。この症状が長期間続くと、日常生活に支障をきたすことがあります。
ピロリ菌感染が進行すると、胃酸が食道に逆流して胸やけを引き起こすことがあります。この症状は特に食後に感じることが多いです。
胃の炎症や潰瘍が進行すると、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。これもピロリ菌感染による胃の不調の一つです。
ピロリ菌感染が長引くと、胃の働きが低下し、食欲が減退することがあります。また、食べ物を摂取しても消化が不完全で満腹感を感じることがあります。
ピロリ菌によって胃に潰瘍ができると、出血することがあります。出血が起こると、便が黒くなることがあります。これは胃からの出血が原因であり、早期の受診が必要です。
ピロリ菌感染を診断するためには、いくつかの方法があります。主に以下の検査が行われます。
血液検査で、ピロリ菌に対する抗体の有無を調べます。この検査は簡単に行うことができ、過去にピロリ菌に感染したことがあるかどうかを調べることができます。しかし、現在感染しているかどうかを知ることはできません。
呼気テストは、ピロリ菌感染を直接確認するための検査です。検査用の薬剤を飲んだ後に、呼吸を測定します。ピロリ菌が胃内にいると、その菌が分解した物質が呼気中に含まれるため、感染の有無が確認できます。
便検査を行い、ピロリ菌のDNAを調べることができます。これは感染が現在も進行中であることを確認するために有効です。
内視鏡検査を行い、胃の状態を直接観察することができます。ピロリ菌によって引き起こされた胃の炎症や潰瘍の有無を確認するために、内視鏡検査は非常に有効です。必要に応じて、胃の組織を採取し、さらに詳しく調べることもあります。