乳腺外科
乳腺外科
乳房に関するさまざまな症状(しこり、痛み、分泌など)に対して診察を行っています。
このような症状が当てはまるからといって、必ずしも悪いものというわけではありません。乳腺には意外と良性疾患が多いのです。自分で触っただけでは、良性か悪性かがわからないことがほとんどです。今までなかった乳房の症状が出てきたら「これって乳癌!?」と1人で悩まずクリニックに相談にいらしてください。
(当院ではマンモグラフィ検査は行っておりません。ご了承ください。)
市区町村の乳がん検診はマンモグラフィを行いますので、豊胸手術を受けていると受けられないことがあります。当院では超音波検査も自費乳がん検診として受けることが可能です。是非一度、当院にご相談下さい。
乳がんの発症は女性ホルモンの影響を受けると言われています。胸が張ったり、痛んだりすることはホルモン補充療法の副作用と考えられますが、ホルモン補充療法を受けている方は、定期的な乳がん検診を受けることをお勧めします。
男性の体内に存在する女性ホルモンの比率が高くなり、男性の乳腺組織が肥大化するものに女性化乳房があります。良性疾患で、多くの場合は自然に改善しますが、60歳代以降の方は男性乳がんとの鑑別が必要になります。自分で判断せずに乳腺専門医にご相談下さい。
家族や近い親戚(3親等以内)に乳がんや卵巣がんの方が複数いる場合、乳がんにかかる可能性が非常に高いと言われています。若いうちからこまめな検診をお勧めします。検診の受け方として、18歳から毎月の自己検診、25歳位から医師による半年毎の視触診および1年毎のマンモグラフィ検査にMRIを加えた検診が勧められています。乳がんがご心配な方は、ご相談下さい。
医師が目で乳房を観察してくぼみがないか、手でふれてしこりがないかなど観察します。触診では、“しこり”の有無をチェックします。しこりが認められた場合、すべて乳癌というわけではありませんが、必要があれば精密検査を行います。人間の感覚ではしこりが1cm以上でないと認識できないとも言われています。1cm以下の小さい病変や、1cm以上であっても深いところにある“しこり”は、触診だけでは確認できないことが多いです。そのため、“しこり”を触れる人も、触れない人も、乳腺超音波検査(エコー検査)をさせていただきます。
超音波診断装置を用いてゼリーを乳房に塗り、その上から乳腺専用のプローブを軽く押さえ滑らせながら、医師の触診や自己触診では発見できないしこり(腫瘤)を探します。妊婦さんがお腹の赤ちゃんをみるときに使う検査と同じで、被爆もなく、痛みも伴いません。病変が見つかった場合は、その病変が何なのか(悪性なのか良性なのか、など)、画像上の影や形からある程度の予測ができます。明らかに良性を疑う所見であれば、そのまま細胞の検査などせずに、経過観察となります。ここで診察は終了です。
少しでも悪性を疑うものや、良性を疑うものでもサイズの大きなものに関しては、精密検査が必要となります。その場合は、“穿刺吸引細胞診”を引き続き行います。
超音波を見ながら、病変に細い注射針(採血で使う針と同じ太さです)を刺して細胞を吸引して調べる細胞の検査です。
細胞診は、良いものか(良性)、悪いものか(悪性)を判定するための検査です。検査自体は約5~10分程度ですが、結果が出るまでは約1週間かかります。
乳がんは、乳房のなかの母乳をつくる小葉細胞や母乳を乳首まで運ぶ乳管細胞から発生する悪性腫瘍です。
乳がんにかかる方は、年々増加し、現在は日本人女性の11人に1人が乳がんになるといわれています。特に40歳代からその可能性が高くなります。
早期発見であれば、5年生存率は例えばステージⅠの乳がんでは95%以上ですが、進行したステージⅣでは30%程度です。治療薬などの進歩で全体としては生存率が上がってきていますが、やはり早期発見が必要です。
乳がんは、症状がほとんどないため、定期的に検診を受けることが大切です。一方で、乳房の痛みはほとんど生理的で心配いらないことが多いです。乳房に不安のある方はお気軽にご相談ください。
乳がんの代表的な症状は以下のとおりです。
腫瘍が大きくなってくると、しこりを触れるようになります。自覚できるしこりの大きさは1cm以上(多くの人が気が付く大きさは2㎝以上)ですが、画像検査で発見できる大きさは3㎜以上です。 また、しこりがすべて乳がんではありません。
乳腺症、線維腺腫、葉状腫瘍なども、しこりとして触れます。しこりに気が付いたら早めの受診をお勧めします。
乳がんが乳房の近くにあると、乳がんが増大するにつれ、乳房の表面に凹み(へこみ)やひきつれ(引っ張られている状態)ができたり、オレンジの皮のように赤みを帯び、毛穴が目立つようになってきたりすることがあります。 また、乳頭や乳輪部分
の痒み(かゆみ)が改善しなかったり、乳頭の先から血が混じさった分泌液がでることもあります。
乳がんは、脇の下や鎖骨上のリンパ節に転移しやすくなります。それが大きくなると脇の下にしこりを触れたり、リンパ液の流れが悪くなって腕のむくみやしびれなどの症状がでることがあります。
ちくちくとした痛みが一部分にだけ生じるというのが特徴で、乳房内のしこりによるものです。痛みでは無く一部分だけ違和感という状態であるかもしれません。 なお、乳腺全体に痛みが生じる場合、乳腺炎(細菌が感染することにより生じる乳房の炎症)の可能性があります。
乳房の良性病変の中では最も頻度が高いものです。20〜30歳代に多く見られます。通常は2〜3㎝くらいの大きさのものが多いですが、思春期ころに生じるものでは巨大な腫瘤となることもあります。これ自体ががん化することはありませんが、がんと見分けがつかないものもあり、経過観察が必要となる場合があります。
乳房良性腫瘤の中で最も発育速度が速いという特徴があります。広い年齢層に見られますが、特に40歳代後半に多い傾向があります。ほとんどの場合、良性の経過をたどりますが、稀に悪性化することがあるので注意深い経過観察が必要となることもあります
乳腺症は、乳房のしこりや痛み、乳頭からの分泌物など色々な症状を呈する、悪性ではない(がんではない)と判断される良性の疾患群の総称です。乳腺症のほとんどが乳癌とは無関係で、乳腺症は病気ではないとすることが一般的です。
乳腺症の原因は、女性ホルモンのバランスがくずれて、一部の女性ホルモンが相対的に多くなっている事だと言われています。
分泌物などが乳管に袋状に貯留し拡張したものです。嚢胞の大きさは様々で、多発することが多くあります。大きさが一定の場合は特に治療は必要ありませんが、嚢胞が
大きくなった場合、中の分泌物を抜くこともあります。
乳管内乳頭腫は30代後半から50代に多く見られる良性腫瘍です。自覚症状としては主に乳頭からの分泌があり、その分泌液は薄い黄色や無色透明、または血液が混じった赤や褐色です。超音波検査では境界が明確な充実性腫瘤や充実成分のあるのう胞性病変として、マンモグラフィの場合は境界が微小石灰化や明瞭な腫瘤として、描出されます。
乳腺炎には、「急性」と「慢性」の2種類あります。 まず「急性」の乳腺炎は、主に産後に起こる症状で母乳が乳腺内に溜まってしまうことで起こる「うっ滞性乳腺炎」と乳管から細菌に感染してしまい、乳房の腫れや痛み・発熱を起こす「急性化膿性乳腺炎」が考えられます。 実際の症状としては、「乳房が張って痛い」「乳房が熱を持っている気がする」「身体がだるい」「微熱がある」などがあげられます。実際にこの症状を感じた方はすぐに乳腺外科を受診して下さい。 慢性の乳腺炎の場合は、授乳経験が無い方でも起こる病気で、乳腺内に膿が溜まってしまう場合が多く見られます。症状としては、「悪寒がする」「リンパ節が張る」「乳房が赤く腫れている」「しこりがある」など急性よりも症状が軽度なので気づきにくいことも多い病気です。実際に乳がんとの判別が難しいことがあるのですこしでも気になる方は早めにご相談ください。
女性化乳房とは、男性において、乳腺の増殖により乳房が肥大した状態のことをいいます。原因としては、生理的なもの、薬剤性、続発性、特発性などがあり、乳腺組織でのエストロゲンとアンドロゲンのアンバランスが病態とされています。臨床的には男性乳癌との鑑別が重要です。
1.生理的乳腺の肥大
2.内分泌疾患に合併:睾丸疾患、下垂体・副腎腫瘍、バセドウ病、ホルモン産生腫瘍など
3.性分化異常に伴うもの:クラインフェルター症候群など
4、その他の疾患に合併するもの:肝疾患、腎疾患、肺疾患、糖尿病など
5、薬剤性に発症するもの
6、特発性(原因不明)のもの
上記の中では薬剤性の女性化乳房症が多いです。
1.ホルモン剤 エストロゲン剤、アンドロゲン剤など
2.抗アンドロゲン剤 アンドロゲン合成阻害剤 ビカルタマイド、ゴセレリンなど
3、抗生剤 メトロニダゾールなど
4、抗潰瘍剤 シメチジン、オメプラゾールなど
5、化学療法剤 メソトレキセート、アルキル化剤など
6、心臓血管薬剤 ジゴキシンなど
7、向精神薬 ジアゼパムなど
身体所見、現病歴・既往歴・内服薬の聴取により女性化乳房症の診断をします。画像診断としては乳腺超音波、マンモグラフィ検査が乳癌との鑑別に有用です。原因のスクリーニングとして各種ホルモン値も含めた血液検査の実施もします。一般に思春期、青年期の女性化乳房症は生理的・特発性の女性化乳房症が大部分を占めで、自然消退が多く積極的治療を要しないことがほとんどです。中高年以降は薬剤性の割合が多く、また乳癌との鑑別を念頭に置く必要があります。原疾患の種類によっては、乳腺肥大の原因となっている薬剤が原疾患の治療に不可欠で中止困難であった場合、副作用としての乳腺肥大は許容して経過観察することもあります。特に高齢者は多剤を内服している場合が多く、原因薬剤の診断、またこれら薬剤の中止、変更の実施が困難な場合も少なくありません。