体重減少
体重減少
急な体重減少は、がんなどの悪性疾患を疑う「警告症状」の1つであり、早急な原因究明が求められます。よく「どのくらい体重が減ったら病的な体重減少ですか?」と聞かれますが、意図していないにもかかわらず6~12ヶ月の間に5%以上の体重減少がある場合、医学的に病的な体重減少と考えます。例えば体重60kgの方であれば3kg程度に相当します。
悪性疾患を疑った場合、発症頻度の高い部位の「がん」から、順に可能性を潰していくのが定石です。消化器領域では胃がん・大腸がんが、その他のがんと比べて圧倒的に頻度が高いため、まずは胃カメラ・大腸カメラを行います。
頻度が低くても、予後の悪いがんは、早めに可能性を潰しておくことをお勧めしています。すい臓がんは予後の悪いがんの代表格で、簡易的には腹部超音波検査、精密な検査方法としては腹部CTやMRI/MRCPがあります。
当院はすい臓がんの早期発見の取り組みとして、「すい臓強化型消化器ドック」メニューを用意しており、侵襲性のない検査としては最も精度の高いMRI/MRCPを取り入れています。
がん以外の疾患としては、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患も鑑別に上がります。慢性的な炎症により消耗性に体重減少を起こします。通常は体重減少以外にも腹痛や血便などの消化器症状を伴います。
体重減少にはがんや炎症性疾患のように身体の消耗が激しく「食べているのに体重が減っていく」場合と、「食欲はあるのに食べられない」場合とがあり、後者で最も頻度が高いのが機能性ディスペプシアです。機能性ディスペプシアの主症状の1つに「早期飽満感」と呼ばれる、少量の食事ですぐにお腹がいっぱいに感じてしまい量を食べられない、というものがあり、体重減少の原因となり得ます。
胃酸の分泌は栄養素の吸収にも深く関わっています。ピロリ菌感染に伴い慢性胃炎が進むと、胃酸分泌が低下することによって消化吸収能力が低下し、体重減少や貧血症状などを引き起こす場合があります。
消化器疾患の他にも、甲状腺機能亢進症や、重度の糖尿病などの内分泌・代謝系疾患でも体重減少が見られる場合があります。これらは血液検査で鑑別することが可能です。
体重減少が見られる場合、まずは血液検査・胃カメラ・大腸カメラを優先的に行います。これでも症状が特定できない場合は、CT/MRIなどにより全身の画像検査を行うのが一般的です。
これらの一般的な検査で原因を特定できない場合は、特殊な疾患が背景に隠れている場合があり、総合病院での検査をお勧めします。極度な体重減少や、重度の貧血などを伴う場合は入院加療が必要となる場合もあります。